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今年で生誕60周年を迎えるゴジラ。劇場ではハリウッド版GODZILLAが大ヒット上映中です。子供の頃から見てきたゴジラが、海を超えて本場ハリウッドで活躍しているのは、うれしいものですよね。
日本中の子どもたちに夢を与えてきた円谷プロですが、その裏では経営をめぐる確執が続き、創業者一族は会社から追い出されています。”ゴジラやウルトラマンの生みの親”という栄光の陰で、資金繰りに苦しみ、倒産寸前にまで追い込まれた原因はいったい何だったのでしょうか。
さて今回は、ウルトラマンを承継できなかった円谷プロダクションを探っていきたいと思います。
日本映画界に、”特撮映画”というジャンルを作ったのが、円谷英二さんです。ちなみに、本日7月10日はウルトラマンがテレビに初めて登場した「ウルトラマンの日」です。円谷英二さんがいなければ、私たちが夢と憧れを抱いたヒーローの存在もなかったのではないでしょうか。1970年に68歳で亡くなるまで、日本の特撮界を支え発展に導いてきました。
これらを教えてくれる教科書など、もちろんありません。CGなどデジタル合成がなく、技術がまだ発展途上な時期に、映像の撮り方でカバーし、様々な映像手法を編み出したのが、円谷英二さんです。いろいろと試行錯誤を繰り返しながら、ゼロから考え出していったのです。円谷英二さんは、常識に捉われない発想で、次々と生み出していったのです。”特撮の神様”と言われるのは、このためです。
円谷プロの凋落のきっかけは、創業者の円谷英二さんの死からわずか3年後に起こりました。1973年に、41歳の若さで就任した2代目社長②円谷一さんが亡くなったのです。後継者を決める間もない急逝だったので、兄弟間での”お家騒動”が勃発してしまったのです。
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円谷プロは創業者の円谷英二さん以降、ずっとトップを一族が占めてきました。”私物化”とも言える経営に、他の役員や従業員は口を挟まなかったそうです。盾突けば自分の首が危ない一方、社長の機嫌さえ損ねなければ、自分たちもやりたい放題できたからです。いわゆる、”内部統制”という発想は皆無でした。
経営体制も混乱を極め、2003年に社長に就任した⑤円谷昌弘さんは社員へのセクハラ問題で退任。後を引き継いだ⑥円谷英明さんも1年で社長を辞めました。外部から招聘された⑦大山茂樹さんは、大規模なリストラ案を主張したが、会長だった④⑧円谷一夫さんの拒否で解任され、再び④⑧円谷一夫さんが社長に復帰することになります。
社長が替わるたびにコロコロと経営方針も変わったため、取引先も従業員も対応に振り回されたそうです。
円谷プロの最大の強みは、円谷英二さんから受け継がれた”特撮技術”でした。しかしその一方で、制作コストの高さに問題がありました。こだわって作られたセットでの撮影には、とてもおカネがかかります。経営不振に陥った理由は、ここにあったのです。
ちなみに、ウルトラマンのテレビシリーズの制作費は、一話30分で約2,000万~3,000万円と言われています。それに対し、局から受け取る制作費は一話数百万円です。足が出た分は、円谷プロの持ち出しになります。ワンシーズンで約50話あるので、年間で億単位の赤字を垂れ流していた計算です。作れば作るほど、赤字が増加する体質に陥っていたのです。
そもそも、ウルトラマンは、年間数十億円を稼ぎ出す強力なコンテンツです。本来なら、何もしなくてもライセンス収入だけで経営できるレベルと言えます。「円谷プロを経営していたのは、人間ではなくウルトラマン」と言われるのも、このためです。銀行もその資産価値を信用して、資金を貸し付けていたいう面もありました。
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仮面ライダーや戦隊モノが続けられる理由は、制作で赤字を出していないからです。
一方で、「ウルトラマンだから、金がかかるのは仕方ない」。制作が赤字でも著作権料で挽回すればいいという甘えが、円谷プロには蔓延していました。これを解消するために編み出したのが、”円谷商法”です。円谷商法とは、キャラクターを乱立させておもちゃで稼ぎ、パチンコ機向けにキャラクターを貸すというビジネスモデルのことです。
”円谷商法”で一時を凌いだ円谷プロですが、一向に変わらない赤字体質と、コロコロと変わる経営陣に、金融機関はついに愛想を尽かします。2007年、数十億円にも上る融資の全額返済を予告もなしに求めてきたのです。
経営危機にあった円谷プロに、そんな資金などあるはずもありません。30億円の累積赤字を抱えて、資金繰りに行き詰まった円谷プロは、CM映像コンテンツ製作などを手がけるティー・ワイ・オーから数千万円の融資を受けます。しかし、ティー・ワイ・オーへの返済が滞ったことを理由に、担保となっていた円谷プロの株式の過半数を握られ、その傘下に入ることになったのです。
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円谷プロを傘下においたティー・ワイ・オーは、M&Aも手掛ける映像コンテンツ制作会社です。関連会社経由で円谷プロの株式の過半数を取得し、まんまと会社の乗っ取りに成功したのです。買収に当たって、ティー・ワイ・オーが突きつけた条件は、円谷家をはじめとする取締役全員の退任でした。
これにより、円谷一族の影響力を完全に排除し、再生に向けて、大規模なリストラに着手します。80人以上いた社員を約半分にまで削減。分散していたスタジオや倉庫、オフィスなどを集約し、年4,000万円超のコスト削減を行なったのです。長年ぬるま湯に浸かっていた社員に対しては、意識改革を断行しました。ティー・ワイ・オーが買収した当時、赤字だった円谷プロは、わずか1年で黒字に転換することに成功しました。
ちなみに、円谷プロ買収に当たってティー・ワイ・オーが投じた金額は、たったの8,000万円でした。
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その後、ティー・ワイ・オーによる内部的な組織改革と平行して、ウルトラシリーズで強い縁を持つバンダイナムコグループが円谷プロに資本参加します(49%)。そしてこの間に、円谷一夫は取締役会長から名誉会長へ退き、その名誉職も2009年に退任となり、これで円谷家は円谷プロの経営から一切排除されることになりました。
2010年4月、円谷プロの株式は、ティー・ワイ・オーからパチンコ会社フィールズに売却されます。円谷プロは、わずか2年足らずで、経営母体を再び変更することになりました。母体企業の業績悪化が、その理由です。コア事業である広告関連事業に、経営資源を集中させるための売却でした。
一方、円谷プロを傘下におさめたフィールズの狙いは、「ウルトラマンシリーズ」の版権の囲い込みにあります。パチンコ業界では、アニメや映画、ドラマなどの遊技機が主流です。そのため、人気コンテンツの版権価格が高騰していました。円谷プロを傘下におくことで、版権元に縛られない供給を行うことが、M&Aの目的です。
と同時に、円谷プロの49%の株式を保有するバンダイとも連携して、キャラクター商品や映画など関連するビジネスの拡大を目指しました。過去の名作を現代の技術で撮り直すことで、遊技機の質の向上と往年のファンの獲得を目論んだのです。
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「日本では、もうウルトラマンは役割を終えたと思います。パチンコ機器メーカーと玩具メーカーが商売としてやっているだけです。子どもに夢を与えるという祖父・円谷英二の思いを、今度は海外で実現したい。」
六代目社長の円谷英明さんは、このように語っています。家族で一致団結して怪獣を倒すウルトラマン・ファミリーと違って、円谷一族はまとまりきれず、結果として、会社から追い出されてしまいました。
円谷英二さんは、天国でこのお家騒動をどのような気持ちで見ているのでしょうか。
もう少し違った世界があったかもしれません。
このような話があると、「だから、同族会社はダメなんだ」という意見をよく耳にします。しかしながら、同族経営自体は決して悪いことではありません。円谷一族は、ロマン(夢)に傾きすぎて、ソロバン(財務)を疎かにしたために、会社から追い出されるという結果となってしまいました。大切なのは、”ロマンとソロバン”のバランスです。
続けて、こちらのコンテンツもご覧くださいませ(๑˃̵ᴗ˂̵)و テヘペロ
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