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初めての”お見合い”は緊張するものです。それは、相手からの「お返事」という評価があるからです。
もし、緊張しないという人がいるとすれば、それは相手への関心が薄い証拠です。もう一度、そのお見合いに対する姿勢を考えなおしてみる必要があるかもしれません。
さて今回は、M&Aのトップ面談で、相手に好印象を与えるコツをお伝えします。
- M&Aのトップ面談を控えている人
- 初対面の相手にドギマギしてしまう人
- どうしても相手の評価を気にしてしまう人
M&Aのトップ面談とは
M&Aにおける”トップ面談”とは、売り手と買い手の意思決定権者が顔を合わせ、お互いの理解やM&A後の方針について意見を交換する場のことです。
トップ面談は、結婚で言えば”お見合い”です。お見合いは、ほぼ80%が最初の自己紹介で決まると言われています。
第一印象が大切なのは、M&Aでも同じことです。売り手のオーナーにとって、買い手の経営者の人柄や将来のビジョンを語りあう、最初の重要なステップです。M&Aを成功へと導く秘訣は、対等な関係でトップ面談に臨むことです。
対等な関係
「お客様は神様です」という言葉があります。ビジネスでは、とかく買い手が有利にことが運ぶことが多いものです。この考えをM&Aに持ち込むと、100%失敗します。
そもそも、ビジネスは対等の関係が基本であり、価値を提供している売り手が買い手から「ありがとう」と言われるのが、本来のあり方です。
当たり前のことですが、「事業を売ってやる」とか「会社を買ってやる」という気持ちでは、進むものも進まなくなってしまいます。
トップ面談のタイミング
通常、買い手がノンネームシートやインフォメーション・パッケージなどの資料を検討し、対象会社のことがある程度わかった段階で行います。トップ面談のプロセスに入ると、いよいよM&Aの本格的な交渉がスタートします。
ちなみに、トップ面談をどの段階で行うかについて、決まりがあるわけではありません。場合によっては、何度面談しても構いません。
トップ面談の目的
トップ面談の目的は、お互い会社や人間性について理解を深めることです。ビジネスについての確認したり、互いの疑問点を解消することにあります。
売主にとっては、
- 買い手はどこに関心をもったのか?
- 買収後の運営をどのように考えているのか?
- どのような経営方針(ビジョン)を持っているか?
- 信頼できるお相手か?
- 買収資金を調達できるのか?
などを確認する場となります。
質問だけをしたいのであれば、M&Aアドバイザーを介して確認することは可能です。しかし、あえてトップ面談を行う意味は、互いに膝を突き合わせて話し合うことにあります。
トップ面談は、相手に自分や自社をアピールするための機会、一種のプレゼンの場と言っても過言ではありません。
トップ面談の留意点
トップ面談は、交渉相手に対して安心感と好意的な第一印象を与える絶好のチャンスです。ここで、トップ面談に臨む前に注意しておかなければならないポイントをそれぞれの立場に応じてお伝えします。
売り手側のトップ面談の留意点
- 買い手からの質問に対しては、常に誠実な対応を心掛ける。
- 無理にリップサービスをせずに、自然体で接する。
- 不明な点は適当に答えたりせず、後日でも良いのでしっかり調べてからM&Aアドバイザーを介して返答する。
買い手側のトップ面談の留意点
- 経営のアドバイスをしたり、売買金額をいきなり提示したりしない。
- 手塩にかけた大切な子供を預かるような謙虚な気持ちで接する。
- 安心感を感じてもらえるように、自社の実績と将来のビジョンをしっかりと伝える。
お互いに共通するトップ面談の留意点
- 時間をしっかりと守り、服装や髪形などの第一印象にも細心の注意を払う。
- 緊張のあまり素っ気ないかんじにならないように注意する。
- 言いづらいことや聞きづらいことは、M&Aアドバイザーを通して行う。
- トップ面談時には、売買金額に関係することは決して口に出さない。
M&A交渉の争点
M&Aにおける交渉は、「少しでも高く売りたい」という売り手と、「少しでも安く買いたい」という買い手との利害の調整と言ってよいでしょう。
交渉の最大の争点となる「売買金額」
M&Aの交渉における最大の争点は、やはり売買金額となります。価格提示をするときは、外部の専門家の力を借り、妥当な企業価値評価を認識して、相手の出方をみながら慎重に行いましょう。
M&Aにおける主要な交渉の争点
一般的に、交渉を進めるうえでの争点は、以下のポイントです。自分なりに争点を整理し、相手企業を理解するために、自社と照らし合わせて、考えてみましょう。
売り手の争点の参考例 | 買い手の争点の参考例 | |
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譲渡価格 |
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引継ぎの期間と条件 |
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譲渡の時期 |
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支払い条件 |
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競業避止 |
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その他 |
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上記以外にも、M&Aにはさまざまな交渉項目が存在します。交渉に入る前に、自社と相手先候補が考える争点の優先順位を整理しておく必要があります。
その他、M&Aにおける交渉の争点
- スキーム
- 分割やエスクローの支払いのタイミング
- 事業計画の進捗状況に見合った価格
- キーパーソンとなる従業員の継続勤務
- M&A実施後の取引先との関係の継続
- チェンジ・オブ・コントロール条項の確認
- 内外への告知や発表の方法とタイミング
- M&A実施後の旧経営者の待遇
- オーナーの連帯保証問題
- 事業とは無関係な資産の取り扱い
- 賃料の是正
- 許認可関係の継続
M&Aはその性質上、どうしても売買金額に目がいきがちになります。しかしながら、売買金額ばかりに囚われてしまうと、大切なことを見逃しかねません。
そうならないためにも、「この事業をもっと伸ばしてくれる後継者は誰なのか?」という視点で考えることが大切です。そうすれば、結果として自社の価値を高く評価してくれる買い手にきっとめぐり合うことでしょう。
- トップ面談は、相手にアピールするためのプレゼンと心得よ!
- トップ面談では、好意的な第一印象を与えることに心掛けよ!
- この事業を伸ばしてくれる後継者は誰なのかを考えよ!