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会社を後継者に託すということは、経営理念を引き継ぐことです。
もちろん、後継者が事業を引き継いだ後は、後継者が自分なりのやり方で経営を行うことが基本です。それは、社長のおもいや価値観、従業員の希望、お客さまの信頼も、一緒に引き継ぐことを意味します。
お客さまの信頼を引き継ぐ
事業を引き継ぐ上で欠かせいないのが、お客さまの存在です。お客さまは、会社が提供する製品やサービスだけでなく、経営理念に共感しているからこそ、今まで取引を継続しているのです。
だから、社長は利益の源泉である経営理念を、後継者に伝える必要があります。事業の本質を理解せぬまま承継した場合、既存のお客さまを一気に失ってしまうリスクがあります。会社を引き継ぐことはできたが、お客さまを引き継ぐことができなかったという事態は、社長としても後継者としても、一番避けたいことです。
だから、社長は、本気で事業を引き継ぐ意志を持った後継者に、事業を引き継ぐべきなのです。仕方なく事業を引き受けて成功させられるほど、事業は甘いものではありません。
何より、お客さまや従業員に迷惑がかかってしまいます。後継者は、経営者という仕事に、やりがいと面白味を感じ、覚悟を決めた人でなければ、事業を存続し発展させていくことはできません。
後継者に伝えること
事業を存続・発展させるために、後継者は、社長の経営に対する基本的な考え方を、製造や販売、雇用などすべての面から理解する必要があります。それが結果として、会社の未来を切り拓くための新たな一歩になるのです。今まで、社長が事業を維持・拡大してきたことは、決して偶然の賜物ではありません。後継者はその秘訣を知りたがっているのです。だから、そこのところを伝えてあげる必要があるのです。
- なぜ、お客さまはうちの製品を購入してくれるのか。
- なぜ、従業員はこんなに一生懸命働いてくれるのか。
- なぜ、金融機関は親身になって相談に耳を傾けてくれるのか。
事業を本気で継ぎたいという意志のある後継者であれば、これらの質問が出てきて当然です。これは、利益の源泉を探ろうとしている証しです。今ある利益だけに目を向けていたり、そもそも質問がなかったりするというケースでは、真剣に引き継ぐ意志がないと判断しても構いません。
事業承継の主役は後継者
後継者とのコミュニケーション時に必要な考え方が、「事業承継の主役は後継者」という考え方です。このようなことをお話しすると、お気を害する社長も少なくありませんが、きちんとお話しすると最後には納得してもらえます。おそらく、ムッとする社長の多くは、今まで自分が行ってきたことに自負や誇りを持っている人が多いような気がします。
だから、自分が主役という気持ちが強いだと思います。今まで、社長が頑張ってきたから、この会社があることは変えようのない事実であり、とても素晴らしいことです。しかし、これから事業を切り盛りするのは、あくまでも後継者なのです。
社長がいつまでも主役でいるつもりだったら、後継者はいつまでたっても育ちません。また、「俺が、俺が」と自分のことだけを前面に押し出していたとしたら、後継者は話を聞くのも嫌になってしまいます。
大切なのはコミュニケーション
不平や不満の多い社長は、100%の満足を求めるあまり、得られたはずの満足と成功を取り逃すことがあります。小さなことにこだわるあまり、大きな成功を取りこぼしてしまうのです。事業承継は、コミュニケーションです。相手方が必ず存在します。
だから、100%満足できることは、ほとんどありません。そのことは、お互い理解しているはずです。だから、脇役に徹することのできる社長のおもいは、必ず後継者にも伝わります。コミュニケーションを通じて、信頼が生まれます。コミュニケーションは円滑に進み、結果として事業承継は成功します。成功したから満足したのではありません。満足していたから成功したのです。
最終判断は社長にしかできません
最終的に、社長の決断が今後の会社の未来を左右することになります。長年、会社を切り盛りしてきた社長であれば、どんな人が自社にふさわしいか判断することは必ずできます。その直感を信じて、決断してください。会社にとって最良の選択を決断することは、結果として社長を満足させる決断になります。後悔を残さないためにも、社長の価値観の原点にさかのぼる必要があるのです。どんな人にだったら、社長の夢を託せますか。
物事の捉え方一つで人生は、大きく変わります。成功を目指すのではなく、満足することに意識を向けましょう。もう一度言います。事業承継の主役は、後継者です。