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会社に安定収益をもたらす、ストックビジネス。あなたは、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
ストックビジネスは、軌道に乗せるまでにそれなりの時間と労力がかかるものです。ただ、継続した売上をもたらすストックビジネスは、会社の経営上、とても心強い収入の柱となりえます。だからこそ、ストックビジネスを自社に取り入れるべく、模索することはとても重要なことです。
さて今回は、会社に安定収益をもたらすストックビジネスについてお伝えします。
- フロービジネスからストックビジネスに移行したい人
- サブスクリプションモデルに興味のある人
- M&Aでストックビジネスを獲得したい人
フロービジネスとストックビジネス
課金モデルには大きく分けて2つあります。
- フロー型ビジネスモデル:一回限りお金が落ちるモデル
- ストック型ビジネスモデル:一定期間周期で安定してお金が落ちるモデル
フロー型は、その都度で商品を販売したり、仕事を請け負うビジネススタイルで、販売した以降はアフターフォローなどで継続的なお金の徴収を行わないビジネスモデルです。筆者の行っているM&Aのフィー収入は、まさしくフロー型の典型になります。
一方、ストック型は、安定した収益を確保できるビジネスモデルで、会計事務所の顧問報酬がわかりやすい例でしょう。
経営を安定させるためには、一過性の収益より安定した収益源を確保したいものです。しかし、実際には、最初からストック型で組み立てが困難な場合も多くあります。
フロー型とストック型かを考える意味
そういった場合は、将来的にはストック型へ移行することを見越して、スタートさせるのが良いでしょう。「そのサービスを使い続ける理由があるか」という顧客目線で考えて、製品やサービスを見ることが大切です。
「今やっていることが資産として積み上がり、5年後10年後はストック型に移行できるのか?」という視点で考えることは、意味のある分析だと思います。
ストック型ビジネスの種類
様々なM&Aを手掛けているソフトバンクの孫正義さんは、投資対象のポイントとして、以下の4つを挙げています。
- アジア中心の投資
- ITを中心とした投資
- 伸びゆく市場
- ストック型ビジネス
ストック型ビジネスがきっちりとランクインしていますね。ストック型ビジネスは、投資資金の回収予測が立ちやすいというのが、その理由です。
では、ストック型ビジネスにどのような種類があるか見ていきましょう。
❶定期契約型ストックビジネス
「毎回注文するのが面倒」「どうせ買うなら安く買いたい」といったニーズにマッチしたストック型です。通販事業では必ず導入されています。身近なものだと、新聞や雑誌の定期購読もこれに当たります。
- 新聞
- 健康食品
- 有料記事サイト(日経など)
- オンデマンド動画配信サービス(ネットフリックスなど)
- 高齢者向け弁当宅配
- 定額制音楽配信サービス
❷ 定期メンテナンス型ストックビジネス
「定期的に保守点検をして欲しい」といったニーズにマッチしたストック型です。機械や建物など、稼働や時間と共に劣化するものに適応できます。高額商品(機械や建物)の販売と同時に加入させることが肝です。観葉植物のレンタルなどは、植物を毎月変えることも可能のため、購入するよりも多様なリノベーションが楽しめます。
- ビルメンテナンス
- 掃除用具レンタル
- 観葉植物レンタル
- 水槽レンタル
- 置き薬
- 植木の手入れ
❸ 保険型ストックビジネス
「もしものことがあった時の備え」といったニーズにマッチしたストック型です。生命保険や火災保険をイメージしていただければ分かりやすいでしょう。高額損害が発生する事柄に有効です。
- 積み立て型保険
- 自動車保険
- 医療保険
- 生命保険
- 携帯端末の補償サービス
❹ レンタル・リース型ストックビジネス
「必要な時期だけ使いたい」「交換を容易にしたい」「多様な物を使いたい」「所有して資産計上したくない」といったニーズにマッチしたストック型です。
- オフィスプリンター
- ウォーターサーバー
- カーリース
- ガス検知器リース
- 携帯電話分割代金
- カーシェアリング
❺ 消耗品の定額型ストックビジネス
「消耗品が高い」といったニーズにマッチしたストック型です。最近では、プリンターを無料で貸し出し、インク代は月額1万円といったサービスも出てきています。
プリンターやゲーム機など、本体に付随する消耗品で稼ぐビジネスモデルにも定額の波が押し寄せています。2015年には「月額定額制のファッションレンタルサービス」が相次いで始まり衆目を集めました。
- ウォーターサーバーボトル
- プリンターのインク
- 歯ブラシ
- シャンプー
- 浄化フィルター
- 日用品
- お酒
- Yシャツレンタル
❻ 教室型ストックビジネス
「直接指導を受けたい」といったニーズにマッチしたストック型です。習い事やお稽古の月謝をイメージしてもらえれば分かりやすいでしょう。今後は、身体を動かすタイプの習い事以外は、縮小傾向になると言われています。一方的に教えるタイプのビジネスは、Eラーニング型で代用できてしまうからです。
- パソコン教室
- 英会話スクール
- 料理教室
- 塾
- 家庭教師
❼ Eラーニング型ストックビジネス
「好きな時間に授業を受けたい」「場所を選ばずに授業をしたい」といったニーズにマッチしたストック型です。特に専門性の高い授業は、限られた日や場所でしか勉強できないためニーズが高いです。市場の大きい学習塾ですが、徐々にEラーニングに移行していくことでしょう。
- WEB英会話
- バーチャルコンサル
- 学習支援クラウドサービス(スタディサプリ、スマートスタディなど)
❽ 権利使用料型ストックビジネス
「著作権を使いたい」「看板を掲げたい」「ノウハウを使いたい」といったニーズにマッチしたストック型です。イラストやフランチャイズやブランド名の使用料がそれに当たります。「月額○万円+売上の○%のロイヤルティー」といったカタチで、固定売上と変動売上の両方が収入として得られるパターンが多いようです。
- 特許技術使用料
- 著作権使用料
- ライセンス使用料
- フランチャイズ料
- ブランド権利使用料
❾ サービス型ストックビジネス
「月によって利用数に波があるが費用を定額にして欲しい」といったニーズにマッチしたストック型です。税理士やコンサルの月額契約はこれにあたります。最近では、エステ、歯科医でも定額サービスが出てきています。コストの大半が人件費のビジネスモデルの場合、全般的に活用できるサービスです。
- 税理士報酬
- コンサルティング
- 脱毛エステ
- 歯医者
- 美容院・理容室
- ペットのトリミング
- 洗濯代行
- ベビーシッター代行
❿ 会員制型ストックビジネス
「ステータスの証が欲しい」といったニーズにマッチしたストック型です。barやホテルなどで使われています。地域や業界の中でもレベルの高いサービスが提供できる場合のみ有効です。
- リゾート会員権
- 会員制バー
- フィットネスジム
- スポーツクラブ
⓫ ファンクラブ型ストックビジネス
「あの人を応援したい」「もっと近づきたい」「もっとクローズなコンテンツも読みたい」といったニーズにマッチしたストック型です。一人のブランド人を立て、会員しか購入できないコンテンツやサービスを販売します。
ただこのモデルは、難易度が高めです。ブランドを確立していなければ難しいビジネスモデルです。
- ファンクラブ
- 有料メルマガ
⓬ コミュニティー型ストックビジネス
「同じ価値観を持つ人と繋がりたい」といったニーズにマッチしたストック型です。ある程度ブランド力のある人がコンセプトを打ち出し、一定のコンテンツを提供することを約束し、クローズのコミュニティーを作ります。
一方通行なコンテンツ配信ではなく、会員同士のコミュニケーションが大きな売りになります。先ほどのファンクラブ型よりも、コミュニティー型のほうが人は集まりやすいです。
- オンラインサロン(Synapse・DMM Loungeなど)
⓭ ASP型ストックビジネス
「便利なアプリを使いたい」といったニーズにマッチしたストック型です。iPhoneの月額課金アプリをイメージしていただければ分かりやすいでしょう。
パソコンソフトでも、今まで買い切り型だったものが徐々に月額制に移行しつつあります。今後、ネットのソフトやサービス、コンテンツは月額課金が当たり前になります。
- アフィリエイトASP
- SEOツール利用料
- クラウド型CRM(顧客管理ソフト)
- クラウド型AI
⓮ 賃貸型ストックビジネス
「部屋を一定期間貸して欲しい」といったニーズにマッチしたストック型です。アパートやマンションの賃貸、オフィスなどがそうです。会員になれば、いつでも好きなフリースペースが使えるようになります。
- 賃貸住宅
- 月極駐車場
- レンタルオフィス
- 有料老人ホーム
⓯ インフラ型ストックビジネス
電話やケーブル、プロバイダーなどがそうです。インフラの元請けになるのは大手企業です。インフラの整備が成長期に入っているときに中小企業は参入するといいでしょう。
- 電話回線
- ケーブルTV
- インターネットプロバイダ
- 携帯電話の基本使用料
- 水道・ガス・電気基本使用料
サブスクリプションサービス
最近では、“サブスクリプション”というサービスが注目されています。サブスクリプションとは、もともと定期購読という意味で、消費者が製品やサービスにお金を支払うのではなく、それを一定期間利用できる「権利」に対してお金を支払うビジネスモデルです。
次々と新たなサービスも登場しており、活用方法によっては、今まで手を出しにくかったサービスが手軽に受けられるようになっています。
サブスクリプションサービスのメリットを事業者と利用者の目線で挙げていきます。
サブスクリプション導入する事業者のメリット
❶ 継続的な売上として試算が出来る
実績値からの予測、保有しているリード数、広告費用など様々な要素から、案件数や売上試算できるようになります。
❷ 新規の導入障壁を下げられる
初期の導入コストを抑えられることで利用者を増やし、定額で課金することによりも、ユーザーが検討しやすくなります。売り切り型だった時より、売上を上げるケースが増えています。
❸ 様々なデータを取得できる
日々の利用状況などを細かく把握することが可能になります。コンテンツの育成やプロモーションにおいても、大きな材料とすることができ、古いデータで新規ユーザの伸び悩みや解約率の上昇に対し、最新のデータで対策を打つことができます。
❹ さまざまな商材に対応出来る
昨今では様々な業界やジャンルでサブスクリプションを用いたサービスが展開しています。
- 毎月自分におすすめの服を届けてくれるサービス
- 毎週旬の野菜やお魚を届けてくれるサービス
- 一定期間毎に車を乗り換えられるサービス
- 毎月定額で高速道路の乗り放題サービス
このように様々な業界や商材もアイデア一つでサブスクリプション型ビジネスに転換させることが可能となるのも、大きな特徴でありメリットです。
サブスクリプション購入する利用者のメリット
❶ お得にサービスが利用できる
初期費用もかからずに、手軽に手が出せるサービスが多く、購入するよりもコストパフォーマンスが高く感じることができます。
❷ いつでも解約ができる
サブスクリプションサービスは、期間に応じた定額サービスであるため、解約すれば料金の発生がなくなります。また「モノ」はないので抱え込む必要はありません。
❸ モノを持つ必要がなくなる
サブスクリプションサービスは、サービスやコンテンツの提供を受けるのがほとんどです。ストリーミングやダウンロードの場合、購入やレンタルのように現物の受け取りや返却といった手間がなくなり、置き場所や管理も不要となります。
❹ 自分の興味や業務の幅を広げられるチャンスがある
「●●放題」の場合、普段は自分が興味を示さないサービスにも試しに手を出してみることで幅を広げられるチャンスがあります。また料金が安かったり、無料期間を設けているサービスも多いので、いろいろなサービスを試してみて、自分にあったサービスを見つけてみても良いかもしれません。
ストックビジネス化を検討しよう!
今まで、色々と見てきましたが、大切なのは事業をどのようにストックビジネス化するかです。
ゼロからノウハウを築き上げていくストックビジネスは、手間と時間がかかります。事業の一部でもストックビジネス化ができれば、毎月の収入はかなり安定します。
M&Aで時間を買う
一番手っ取り早いのが、M&Aで事業を買収したり、投資によってノウハウを外部から手に入れるというやり方です。仕組みをまるごと買ってしまえば、ノウハウを築き上げる過程を省くことができます。
自社で立ち上げることは素晴らしいことですが、M&Aで一気に獲得するという発想は、視野が大きく広がると思います。M&Aは、実際に稼働しているビジネスにお金を投じる行為です。どちらが合理的かはすぐわかると思います。
数字的な華やかさのあるフロービジネスも魅力かもしれませんが、ストックビジネスを育てていくことも重要です。
ストックビジネスは、収益が安定するまでに時間がかかるため、運転資金の確保が課題となります。必要なコストを計算して、資金不足にならないようにしっかりと管理する必要があります。
- ストックビジネスで安定収益を確保しよう!
- 自社にあったビジネスモデルを模索しよう!
- 自社で立ち上げるもの良いが、M&Aも検討してみよう!