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激しい生存競争を勝ち抜いてきた社長の直感力
中小企業の生き残り競争は年々激しさを増しています。その中で生き残ってきたオーナー経営者は、数々の試練の中で野生の勘のようなものを身に付けているはずです。
「今ここで、この手を打たければ、ヤバイことになる」
「ここは一気に経営資源を投入すべきだ」
「これに手を出したら会社が潰れてしまう」
このようなことが、直感的に分かるのがオーナー経営者というものです。実際のビジネスの修羅場で揉まれているうちに、自然と直感が研ぎ澄まされているのです。この野生の勘を十分に鍛えられなかった人たちが、廃業に追い込まれています。
生き残ってきたのには、必ず理由がある
何も考えずに、会社を何年も何十年も維持継続させることはできません。ここまで会社を継続できたのも、社長の知恵と努力の賜物に他なりません。
ご存じの方も多いと思いますが、マーケティングの業界では、USP(Unique Selling Proposition)と呼ばれるものがあります。USPとは、マーケティング用語で、競合他社にない自社独自の売り(強み)、付加価値、差別化策のことをいいます。もう少しわかりやすく言い換えると、
「市場の中で、お客さまが他の会社では解決できない悩み・欲望を解決できる強み」
競争相手が多ければ多いほど、USPは重要になってきます。競合他社との違いを明確にしていなければ、会社はその他大勢に埋没してしまうからです。社長がUSPを明確に認識していれば、たとえ今が赤字体質でも、伸びしろのある事業、今後成長しうる事業の芽に魅力を感じ、社長の意志を継ぐ後継者が現れる可能性が格段と広がるに違いありません。
会社にストックしてきたもの
事業承継では、”ストック”という概念がメチャクチャ大事です。会社に何を積み上げてきたか、というのが会社経営の本質的な課題だからです。
売上や利益といった経営数値も大事ですが、その背後にストックしてきた経営資源は、社長が想像するよりもたくさんあります。
- 技術力
- 人材チーム
- 顧客基盤
- ノウハウ
- 知的財産
- 収益構造
売上や利益は大いに越したことはありません。しかし、これらの経営数値を叩き出した裏側、もしくは、今後の新しいビジネスの種になりうる期待値が、事業承継では極めて重要なのです。
今まで何に苦労してきたか、何が結果として利益につながったか、など、社長の価値観やバックグラウンドが、これらのストックに影響を及ぼし、会社のビジネス設計に大きく反映されています。
確固たる指針を示すことが、リーダーシップの本質です。言い換えると、「うちの会社はこれをストックしていくんだぞ」と会社の方向性を指し示すのが、リーダーたる社長の役目です。
その結果が、これらの経営数値にあらわれているのです。「星の王子様」ではありませんが、「本当に大切なものは目に見えない」ものなのです。
「会社が今まで積み上げてきた価値は何なのか」。一番よく知っているのは、他ならぬ経営者ご自身です。本当の意味での価値を、今一度、掘り下げて考えてみる必要があるかもしれません。
専門性は会社のUSPにはなりえない
専門的なサービスを提供する事業者の多く、特に製造業の経営者に多いのですが、お客さまは自社の専門性を買ってくれているのだと考えてしまいがちです。確かに、それも一理あるとは思うのですが、本当にそれだけかどうか、もう一度ゆっくりと考えてみる必要があります。
普通のお客さまは、専門性は当然と思っています。そもそも、その専門性がないから、依頼しているはずだからです。当然のことながら、お客さまは専門性を明確に評価することができません。また、問題がスムーズに解決したとしても、それが本当に優れたものかどうかは、お客さまにはわかりません。むしろ、専門家なら当然と思っているケースがほとんどでしょう。
お客さまは、自分が大切に扱われているかどうかを常に敏感に感じ取っています。社長が売っているのは、製品やサービスではなく、むしろ人間関係なのです。何を販売していても、最も重要なのがそれを扱う会社や人間なのです。
人がものを購入するのは、理屈や理論ではなく 感情です。人は商品への期待感という感情でものを購入します。「良さそうに見える」、「好感がもてる」といった見た目で判断していることを忘れないでください。
会社の価値がわかる人に会社の未来を託す
中小企業の場合は、社長が会社のエンジンであり、原動力です。会社の強みのすべてが社長に依存していないか確認する必要があります。組織化できていれば、問題ありません。
また、現状赤字体質の会社でも、伸びしろのある事業や、今後成長しうる事業の芽があるなど魅力を明確にすれば、新しい道が開けるかもしれません
仮に、弱みがあっても、心配することは何もありません。そもそも、弱みのない会社などあるわけないのです。それに、弱みがあるからこそ、引き継ぐ醍醐味があるのです。きっと、後継者の意志と力で克服していくことでしょう。それぐらいの気概がなければ、後継者の資格はありません。
最後に、これだけは忘れないで下さい。
後継者は会社をただ引き継ぎたいのではありません。会社がもたらす価値を引き継ぎたいのです。