最新記事 by 五十村 髙志 (全て見る)
- 【令和2年度補正】M&A費用を助成する経営資源引継ぎ補助金の活用法 - 2020年7月13日
- 【令和元年度補正】事業承継補助金を活用して世代交代する方法 - 2020年4月8日
- 【M&A投資】買収を成功させる投資判断基準 - 2020年3月21日
2020年7月6日、中小企業庁は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の対策として、「経営資源引継ぎ補助金」の実施を発表しました。新型コロナウイルスの第二波が心配される中、廃業を食い止め、事業承継を円滑に進めるための国策です。
これまで予算措置のされていなかったM&A実施費用について拠出されるので、これからM&Aを進めていきたいとお考えの方には、ぜひ活用したい補助金です。
さて今回は、経営資源引継ぎ補助金について、お伝えしたいと思います。
- 会社売却を検討している人
- コロナ禍で廃業を検討している人
- 地域の雇用を守るため買収を検討している人
経営資源引継ぎ補助金の目的
経営資源引継ぎ補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響により、企業の経営が立ち行かなくなり、雇用を維持できなくなることを懸念して作られた制度です。具体的には、事業再編・事業統合等に伴う中小企業者の経営資源の引継ぎに要する経費の一部を補助するというものです。
これまでも事業承継に関する補助金はありましたが、M&Aの手数料は対象外でした。でも、今回の経営資源引継ぎ補助金は、違います!バッチリ対象となっています。国は、企業の新陳代謝を加速し、経済の活性化を図ることを目的としています。
合併・買収にかかるM&A手数料の経費の3分の2の金額が補助されるので、事業承継を検討しやすくなると言われています。
経営資源引継ぎ補助金の補助対象者
経営資源引継ぎ補助金は、事業承継やM&Aを促進することによって、企業の新陳代謝を加速し、経済の活性化を図ることを目的とした制度です。事業を存続させ、雇用を維持させるための制度なので、該当する中小企業は積極的に活用していきたいものです。
- 日本国内で事業を営む者
- 反社会的勢力でないこと、関係も有していない者
- 法令順守上の問題を抱えていない者
- 経済産業省から補助金指定停止措置が講じられていない者
- 匿名性を確保しつつ、公表される場合があることに同意する者
- 補助事業の調査やアンケート等に協力できること
ちなみに、中小企業者等の定義については、「中小企業基本法第2条」に以下のように規定されています。
業種分類 | 資本金の額又は出資の総額 | 常勤従業員数 |
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
例外もあるので、詳しくは以下をご覧ください。
☞ FAQ「中小企業の定義について」
経営資源引継ぎ補助金の補助対象経費
補助対象となる経費については、下記の要件を全て満たす必要があります。
- 使用目的が補助対象事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
- 補助事業期間内に契約・発注をおこない支払った経費
- 補助事業期間完了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払等が確認できる経費
後述しますが、支払時期や条件はなかなか厳しいものがあります。
続けて、対象となる二つの類型ついて、具体的に見ていきましょう。
Ⅰ型:買い手支援型の補助率・補助金額
Ⅰ型の「買い手支援型」は、事業を引き継ぐ方を支援するものです。補助率は補助対象経費の2/3で、経営資源の引継ぎを促すための支援の場合は、上限額が100万円です。経営資源の引継ぎを実現させるための支援の場合は、上限額が200万円です。
対象となる経費 | 補助率 | 補助金額 |
謝金、旅費、外注費、委託費、 |
2/3 | 経営資源の引継ぎを促すための支援 上限100万円 |
経営資源の引継ぎを実現させるための支援 |
- 事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎ後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること。
- 事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎ後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全般をけん引する事業を行うことが見込まれること。
Ⅱ型:売り手支援型の補助率・補助金額
Ⅱ型の「売り手支援型」は、事業を承継したい方を支援するものです。補助率は補助対象経費の2/3で、経営資源の引継ぎを促すための支援の場合は、上限額が100万円です。経営資源の引継ぎを実現させるための支援の場合は、上限額が650万円です(但し、廃業費用を活用しない場合は200万円)。
対象となる経費 | 補助率 | 補助金額 |
謝金、旅費、外注費、委託費、 |
2/3 | 経営資源の引継ぎを促すための支援 上限100万円 |
経営資源の引継ぎを実現させるための支援 |
- 地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業を行っており、事業再編・事業統合等により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。
経営資源引継ぎ補助金では、M&A仲介業者やファイナンシャル・アドバイザー(FA)へのM&A手数料の一部が補助されます。それだけでなく、デューデリジェンスの費用、概要書作成費用、契約書作成費用、相談の謝金、交通費なども補助されるため、M&Aを検討する経営者にとっては、非常に使いやすい内容となっています。
経営資源引継ぎ補助金の申請スケジュール
経営資源引継ぎ補助金の交付申請の受付期間は、オンラインの場合は7月13日から8月22日まで、郵送の場合は8月21日まで(当日消印有効)です。時間的な制約があるため、使い勝手がいいとは言えません。
補助金交付までの流れは、以下のとおりです。
- 2020年7月13日(月)~2020年8月22日(土)に申請
- 2020年9月中旬頃に、国が採択審査を実施予定
- 2021年1月15日までに、申請者が対象コストを支出
- 2021年3月末に、補助金交付
上記の通り、補助金は2021年3月下旬に銀行振込されます。事前に費用の一部が振り込まれるわけではありません。また、注意が必要なのは、事前着手届出書を提出しなければ、補助金の対象となるコストを支出するチャンスは、9月中旬から1月15日の約4カ月に限られるということになります。
M&Aは交渉事なので、この期間にピンポイントで、コスト発生を組み込むことは容易ではありません。支払いがずれようものなら、補助金の交付は一切受けられません。そういう意味では、うまくいったらラッキーという感覚が必要かもしれません。
経営資源引継ぎ補助金交付申請時のM&A手数料
M&Aの仲介手数料は、譲渡価額によって決まります。ただ、申請時点では、いくらで売れるか見当がつかないものです。通常でも予測が難しいのに、このコロナ禍においては、全くもって予測ができません。なので、申請金額は概算額で申請しても、大丈夫とのことです。申請した金額どおり使わなくても、ペナルティはないため、少し多めに申請しておくのが得策です。
なお、経費については「2者以上」の業者に相見積もりを取ることが必要となります。補助金の性質上、仕方のないことかもしれませんが、なかなか現実的ではないような気がします。こちらについては、相談窓口と相談の上、進めた方が良い気がします。
経営資源引継ぎ補助金を活用しよう!
一旦落ち着いたようにみえた新型コロナウィルス感染症も、息を吹き返し、第二波が心配される事態になっています。たくさんの経営者が、難しい舵取りを迫られ、中には廃業を考える企業も増えています。
仮に、M&Aという手段で事業を引き継ぐことができれば、地域経済における雇用が守られます。事業承継を円滑に進めるため、国も本腰を入れて支援に乗り出しています。せっかくの制度ですので、該当する可能性がある経営者の方は、経営資源引継ぎ補助金を有効活用し、納得のいく方法を模索するというのも一つの手だと思います。くれぐれも、補助金があるから、M&Aをするという本末転倒な考え方はやめましょうね。
- まずは、2020年8月22日までに申請しろ!
- 2021年1月15日までにM&Aを完結させる気概を持て!
- 補助金ありきでM&Aするな!