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社長が事業承継に向き合うとき、”ロマンとソロバンの感覚”を見失ってしまうことがあります。「自分はもう引退する身だから、将来のことは後継者に任せる」と変に割り切ってしまって、会社の将来を全く考えなくなってしまう社長が少なからずいます。これは、社長が”ロマン”、つまり理想を掲げなくなったことを意味します。
現実だけを見ていてはいけません
「現実を見るようになった」と言えば聞こえはよいのですが、理想を掲げなくなったら今までの社長ではありません。本人は気付いてないかもしれませんが、仕事に身が入らなくなったり、日頃の言動に迫力がなくなったり、思った以上に表現されているものです。このような雰囲気を、社員やお客さまなどの利害関係者は、敏感に察知しています。そのレーダーたるや、ホントもすごいものがあります。
社長は今まで、会社を発展させるために、理想と現実の間でがんばってきたはずです。それなのに、自分が引退するとなると、「後は後継者が考えることだから」といって、事業に対する情熱を失ってしまったら、会社はどうなってしまうのでしょうか。従業員やお客さまは心配になるでしょうし、社長とはまるで方針の違う後継者が後を継ぐことになってしまうかもしれません。
社長の判断基準を伝える
後継者が自分の判断で経営をすること自体はよいのですが、社長の方針の意図を理解したうえで判断しないと、会社は大変なことになります。会社は社長の方針で経営されていたからこそうまくいっていたのであり、後継者がそれを無視するような方針転換をすると、会社はたちまち大きな混乱が起きてしまいます。
従業員は反発するでしょうし、お客さまや銀行は警戒します。混乱が起きてもそれを上回る成果が出ればよいのですが、成果が出なければ後継者は信用を失ってしまします。
社長は、事業承継だからといって、変に割り切ってしまってはいけません。お客さまや従業員のためにも、社長は引退するまで、いや、引退した後もぶれてはいけないのです。
社長自身が後悔しないために
自分が引退する身だからと考えるあまり、これまで掲げてきた理念と異なる決断をしようとしていませんか? もしそうだとしたら、5年後、10年後に、大きな後悔として、自分の身に降りかかってきます。
会社をここまで導いてきた社長は、理想を実現する能力が高い人であり、会社のエンジンです。エンジンのない車が進まないのと同じように、社長が理想を持ち続け、周囲にロマンを語り続けなければ、会社は前に進まなくなってしまいます。
事業承継に思い悩むあまり、社長が立ち止まってしまったら、会社に停滞を招いてしまいます。そうならないために、社長はロマンを語り続ける必要があります。逆に言えば、ロマンを語れなくなりはじめたら、社長の交代を考えなければなりません。
勇退を考えるタイミングは、売上や利益の減少ではありません。ロマンを失いかけたその時です。完全にロマンを失う前に手を打つのが、社長に残された最後の仕事です。