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ちょっとした隙間時間、ふと立ち寄ってしまうのがスターバックス。「コーヒーが飲みたい」=「スタバ」という図式ができあがっている人も、多いのではないでしょうか。ほんと、いつ行っても混んでますよね。他にも美味しいコーヒーを出してくれるお店はあるのに、なぜスタバは私たちをこんなにも惹きつけるのでしょうか。
さて今回は、スターバックスの原点、シュルツさんが提唱した”サードプレイス”というコンセプトについて探っていきたいと思います。
シュルツさんは、NYブルックリンの貧困街に生まれました。貧しい家庭ではありましたが、自ら学費を稼ぎながら、なんとか大学を卒業。大学卒業後、調理器具の販売会社を経て、コーヒー豆の販売店スターバックスに転職します。この時、スターバックスはまだまだ小さな会社でした。
転機になったのは、1985年。仕事でイタリアを訪れたシュルツさんは、生活の一部となっているエスプレッソ・バーに感銘を受けます。会社に進言するものの、却下されてしまったため、退職して自らエスプレッソ・バーを開業したのです。結果は、見事に大成功。開業からたった二年で、スターバックスを380万ドルで買収したのです。
シュルツさんが、エスプレッソ・バーを開業するにあたって、お店のコンセプトとしたのが、サードプレイスという考え方です。
今流行りのノマドワーカーではありませんが、筆者もiPadを持ち歩き、仕事の合間に喫茶店で仕事をしたりしています。メール送受信やブログの執筆など、外の方がかえって落ち着いて仕事ができるから不思議なものです。
サードプレイスとは、自宅(ファーストプレイス)でも、職場(セカンドプレイス)でもない、自分らしさを取り戻せる第三の居場所のことです。この概念は、アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグさんが提唱した考え方で、言葉としては30年前から存在していたようです。筆者は、てっきりシュルツさんが提唱したもんだと思い込んでいましたが、単なる勘違いでした。
では、サードプレイスという考え方が生まれた背景には、一体何があったのでしょうか。
現在、多くのビジネスマンは、大きなストレスを抱え、自殺や過労死によって、尊い命が失われています。行き過ぎた成果主義により、家庭的な企業が減り、自分が所属するコミュニティから孤立する人が増えていることが原因とされています。この現象は、特に都心で暮らす人に表れているようです。
サードプレイスは、政治・経済・法律などによって縛られることなく、自由に過ごすことができる場所です。また、参加する機会は平等で、条件は一切存在しません。自らの意思で気軽に参加できるからこそ、高揚感が得られ、価値ある時間と感じることができるのです。
サードプレイスは、健全な存在で、家庭的なぬくもりがあります。包容力をもってすべてを包み込み、否定的な発言(緊張・憎悪などを感じさせるもの)は歓迎されません。リラックスした雰囲気なので、自然と笑顔があふれるのです。
サードプレイスには、必ず常連さんの存在があります。常連さんたちによってその空間の色が作られていきます。なので、とても個性的になります。個性的でありながらも優しさがあるため、多くの人がその居心地を求めて、その空間に魅力を感じて集まってくるのです。
サードプレイスへの参加は、自分の意思で行うため、主体性や自立性を発揮することができます。決断力は自然と高まっていきます。
自宅や職場でもない気の合う人との交流は、たくさんの発見と刺激をもたらせてくれます。
人は誰しも社会的な役割を演じており、複雑な人間関係に悩みを抱えています。サードプレイスでは肩書は一切関係ないため、自分という存在を再認識でき、精神的な調和を図ることができます。
筆者も昔、頭がパッカーンてなった時期がありますが、複雑な人間関係って疲れてしまいますよね。かと言って、コミュニケーションなしでは、人生つまらないものです。自分が社会に対して何らかの役割を果たしているという実感を得たいってのが人間というものです。そんな中、利害関係で結ばれていない、第三の場所が重要ってことは、ほんとよくわかります。
このサードプレイスというコンセプトを取り入れたのが、スターバックスです。スターバックスは、単にコーヒーを飲む場所を提供するのではなく、”くつろげる空間を提供”したのです。
「本当に作りたかったのは、居心地の良い場所です。深煎りコーヒーだけではありません」
シュルツさんは、クオリティの高いコーヒーの提供だけではなく、人と人のつながりを大切にできる空間を提供することを目標に掲げました。
一般的に、サードプレイスとして利用される店舗は、顧客の滞在時間が長くなります。そのことで客単価は上がるかもしれませんが、回転率は確実に落ちます。経営者としては、とても悩ましい問題です。回転率を良くするため、店内のコンセントを使用不可にしたり、長時間滞在を禁止にするカフェもありました。利益重視の考え方から、慣れ親しんだ常連さんを追い出してしまったのです。
そんな中、スターバックスは多くのカフェを横目に、真逆の方針、すなわち回転率の悪い顧客を積極的に受け入れたのです。当時、この考え方は異端であり、画期的でした。
シュルツさんが出した方針は、以下の3つです。
シュルツさんは、3つの原則を愚直に守り、お客さまとの良好な関係を築いたのでした。現在のスターバックスがあるのは、「サードプレイスをどうしても提供したい!」というシュルツさんの強いおもいと、従業員の不断の努力の賜物です。
実は、シュルツさん、過去に一度スターバックスを退任しています。引退した2000年から、スターバックスの業績が落ち込みはじめました。無茶な出店計画などが原因で、人材不足やクオリティが低下し、業績が悪化。2008年には、ついに赤字に転落、スターバックスというブランドに陰りが見え始めたのです。
既存店の売上が鈍り、その場しのぎの戦略としてとった策が次々に裏目に出てしまいます。手っ取り早く利益を確保するために、必要な投資を怠り、完全なる悪循環に陥っていたです。
CEOとして舞い戻ったシュルツさんは、まず7,100もある店舗を一斉に閉店。バリスタの再教育とブランド力の向上に着手したのです。その結果、数百万ドルの損失が発生。投資家からは非難轟々です。しかし、シュルツさんは、そんなことにはめげません。原点回帰を目指し、次々と手を打っていきました。
従業員の教育にも目途が立ち始めた2010年には、WiFiを無料開放し、音楽や映画などを無料で提供するSDN(Starbucks Digital Network)を開始しました。サードプレイスをさらに推し進めた、第4の場所”フォース・プレイス”構想です。SDNによって、スターバックスは、単なるコーヒーを飲む場所ではなく、それぞれ個人にとって趣味を楽しむ”価値ある空間”へと生まれ変わったのです。
また、TwitterやFacebookなどSNSの発展により、「スターバックスの経験」を店の外に拡張できるようになりました。宣伝広告に頼らず、いわゆる”意識高い系の人”たちが勝手にスタバの魅力を発信していく状態を作り上げたのです。この効果たるや、計り知れません。スターバックスが、40年間で築いた信頼関係が最高のカタチで実を結んだ瞬間でした。その結果、赤字転落からわずか3年後の2011年9月期、スターバックスの売上高は120億ドルと過去最高を記録したのです。
シュルツさんが、経営危機に陥ったスターバックスを再生することができたのは、会社(セカンドプレイス)にいながらも、「社会の役に立っている」という実感や、「ここにいていいんだ」という安心感、言い換えれば、サードプレイスの感覚を従業員に与えることができたからこそ、成しえた偉業だと思います。これこそが、現代の経営者に求められている役割なのではないでしょうか。
ハワード・シュルツさんは、4月にCEOを退任すると発表しました。後任には同社の社長兼COO(最高執行責任者)には、ケビン・ジョンソンさんが就任するそうです。ケビン・ジョンソンさんには、スタバの原点を忘れず、シュルツさんが再登板することがないようにして頂きたいものです。
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