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あなたは、SNS等で話題の「破天荒フェニックス」という本をご存知でしょうか?
Amazon 売れ筋ランキングでも、ベストセラーになっているので、ご存知の方も多いと思います。この本は、30歳の時に14億円の負債を抱えた売上高20億円のメガネ販売会社オンデーズを買収した、田中修司社長の自叙伝です。本のタイトルになっている”破天荒フェニックス”とは、債務超過に陥っても不死鳥のごとく何度でも蘇る社長のことを示しています。
「破天荒フェニックス」の本の帯には、インパクトのあるフレーズが書かれています。
「 僕は、絶対に倒産すると言われたオンデーズの社長になった。」
とてもそそられる帯ですよね。「破天荒フェニックス」は、エンターテイメント小説としても傑作ですし、ビジネス書としても楽しめます。直木賞受賞作家・池井戸潤先生の作品が好きな方にとっては、きっとハマる内容だと思います(*^-^*)v
また、当時の資金繰りや心境等をこれでもかっていうくらい赤裸々に語っているため、経営者やCFOの方にもおススメですよ。
さて今回は、「破天荒フェニックス」の著者、オンデーズの田中修治社長が手掛けたM&Aについて、探っていきたいと思います。
オンデーズとは、「メガネ業界のZARA」を目指し、ファッション性の高いメガネを低価格で提供する全国チェーンの会社です。2018年6月現在、10ヶ国250店舗(日本、シンガポール・台湾・タイ・フィリピン・マレーシア・カンボジア・オーストラリア・ベトナム・オランダ)を展開しており、売上高160億円、従業員2,000名の会社です。
2年程前には、「ワールドビジネスサテライト(テレビ東京)」で、幹部社員を選挙で決めるという人事制度が取り上げられたこともありました。「店長をはじめとする管理職すべてを選挙で選ぶ」って、スゴイですよね。随分と尖った発想です。まるでAKB48っ ∑(゜ロ゜ノ)ノワオォ!!
しかも、「やりたい人間はどんどん立候補できる」という仕組みです。社歴も一切関係なく、選挙ポスターまで作って全店休業して、選挙に没頭するというこだわりっぷり。会社が、人事権という最大の武器を手放すなんて、かなりぶっ飛んだ制度だと思います ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
選挙制度を導入した理由について、田中修治社長はこのように語っています。
「会社にとって一番良いと思ってその人を管理職に据えたのに、他の人たちからは『社長、現場わかってねえよ』とか(不満が出る)。自分が決めたことは全部正しいわけではないと、最初の2~3年間で気付いた」
人は、自分が望まない意見を事実を、無視してしまいがちです。それを割り切って考えるのは、至難の業です。きっと、田中修治社長は自分の感情よりも、社員が納得するカタチを本気で追い求めているのでしょう。
テレビ放送終了後に、田中修治社長は「次期社長を選挙で決めたい!」という考えをFacebookで明かしています。
https://www.facebook.com/shuji.tanaka.3/posts/1096108660451401
Facebookの文言からは、社員の意見を取り入れながら全速力で事業を前に進めていく、そんな強い姿勢を感じました。
当時のオンデーズは、年間売上高20億円に対して、銀行からの短期借入金が14億円もある超債務超過の会社でした。借入の月額返済額は8,000万円から1億2,000万円あるにもかかわらず、毎月2,000万円も営業赤字を垂れ流しているという、異常な資金繰りに陥っていました。
そんなオンデーズに対して、7,000万円の第三者割当増資を田中修治社長が行うカタチで経営権を取得しています。
(参照:「破天荒フェニックス(第1話 トラックのハンドルを握るのは誰だ~第2話 新社長は救世主なるか?)」)
オンデーズ買収から一年も経たないうちに、メガネ事業と相乗効果の高い雑貨事業を事業譲渡により取得します。これは、遺産相続で手にした2億円を会社に貸すカタチで買収に乗り出しました。最終的に、貸した資金はデット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap:DES)という手法により、借入金を資本に組み入れました。
(参照:「破天荒フェニックス(第9話 血みどろの買収劇)」)
見込んでいた相乗効果を出すことができなかったため、買収から一年も経たないうちに、ファンファン事業を手放すことを決断します。紆余曲折ありましたが、ピーターパンの川上社長にファンファン事業を売却します。正確には、新設分社型分割後の株式譲渡になります。最終的に、投資した金額2億円の百万分の一の200円で売却することになりました。
(参照:「破天荒フェニックス(第10話 悪意は悪意をよぶ~第12話 遅すぎた決断の果てに)」)
田中修治社長が手掛けたM&Aを見ていくと、M&Aって怖いというイメージに思えてきますよね。実際には、オンデーズのブランディングの側面があったり、本なので多少の脚色もあると思います。まぁ、話半分に割り引いて見たとしても、かなり”破天荒なM&A”であることには変わりないですね。素人は絶対にマネしちゃいけませんよ~(笑)。
でも、M&Aを検討する人にとっては、ぜひおすすめしたい一品です。M&Aの実務書は本屋でよく見かけますが、財務状態をここまで吐露した書籍はなかなかお見かけしません。バイサイド、セルサイドの両方の気持ちもわかります。M&Aを決断する経営者の心情や、PMI(Post Merger Integration)についても、参考になると思います(ง⁎˃ ᵕ ˂ )ง⁾⁾
もしかしたら、「破天荒フェニックス」を読んで、M&Aのイメージが悪くなってしまったという方もいるかもしれません。確かに、「M&A」と聞くと、真っ先に思い浮かぶのが、悪いイメージの人もいます。これは、M&Aを題材にした映画やドラマの影響、買収という言葉の響き、一時期大きなニュースとなった乗っ取りとかマネーゲームというイメージも強いからだと思います。実際に筆者が現場で味わう感覚としては、M&Aがこれだけ浸透した今でも、「M&Aは怖い!」という印象を根強く抱いている方がまだまだ多いような気がします。
特に、ファンドに対するイメージは某ドラマの影響もあってか、あまり良くはないですね。
2018年11月、オンデーズはLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン系の投資会社と三井物産系ファンドの2社から出資を受けると発表した。筆頭株主だったオンデーズの田中修治社長も保有株式の一部を両社に売却するが、今後も社長にとどまり経営に関与する。資金調達を機に積極出店を加速する。(日本経済新聞:2018/11/8)
2018年11月8日、衝撃的なニュースが飛び込んできました。LVMH系のLキャタルトン・アジア(LCA)と三井物産企業投資の2社が共同出資会社を設け、オンデーズが実施する上限額30億円の第三者割当増資を引き受けるというニュースです。田中修治社長ら現経営陣の保有株の一部も取得したそうです。これにより、オンデーズの筆頭株主は田中修治社長からLCAに移ることになります。
このニュースの第一報を新聞で見て、「やりおったな!」とまず思いました。「破天荒フェニックス」は、壮大なブランド戦略の一つだったと確信した瞬間です。さすが、元デザイン会社。魅せ方が抜群です。世界に名だたるブランド会社LVMHから、資金を引っ張る手腕に感心させられました。きっと、CFOの奥野良孝さんも暗躍していたのでしょう。ちなみに、LCAは韓国のアイウエア・ブランド「ジェントル・モンスター(GENTLE MOSTER)」にも投資していますが、日本企業への投資案件第一号となります。
2018年11月8日にプレスリリースされた #OWNDAYS の増資記事。引受先として紹介された”Lキャタルトン・アジア”については未知の人が多いと思います。簡単に概略を説明しましょう。
#破天荒フェニックス #オンデーズ #Lキャタルトン #LCattterton #LVMH
https://t.co/ffoyeNPXmp— 奥野 良孝 (@YoshitakaOkuno) November 8, 2018
オンデーズの田中修治社長は、「日本でのシェアをまだまだ強化していきたい」と意気込んでいます。
LCAからは、ブランディングや商品に関するサポート
三井物産企業投資からは、販路についての協力
今回の資金調達を機に、オンデーズは、ファンドの経営資源を最大限に活用し、国内外で出店や人材育成などを充実させ、5年後までに現在の約2倍にあたる500店舗を目指すそうです。
「ファンドが怖い!」というイメージをお持ちの方もいたかもしれませんが、オンデーズの事例をご覧になって、考えが少し変わったのではないでしょうか。ファンドを自社の足りない部分を補ってもらえるパートナーとして考えれば、怖いことなど何もありません。
M&Aにおいては自社の弱みを悲観することなどないのです。なんてったって「弱みは成長余地」になりますからね。これは、決してファンドだけに限った話ではありません。M&Aを検討する経営者には、「完璧な会社を買収しても、面白みがない」と考える人が多いものですよ。
”M&Aを自社の成長や発展の可能性の一つの戦略”として考え、どこと組むと自社が成長するかという視点でみてみると、世界が広がるかもしれません。「どこを買収したいか?」「どこの資本傘下に入りたいか?」と妄想してみるのも面白いと思います。
ちなみに、筆者はM&Aアドバイザーとして、ファンファン事業売却のサポートさせて頂きました。本の中では、「契約書を作成した会計事務所の担当者」として登場しています。もう10年も前の話です。「破天荒フェニックス」のおかげで、当時の財務担当奥野さんとの壮絶なやり取りを思い出すことができました。その時を思い出すと、今でも胃がキリキリします(笑)。
補足になりますが、引き継ぎから数年後、ファンファン事業はV字型回復を果たし、事業を引き継いだピーターパンの川上社長はカンブリア宮殿に出演されました。ファンファン事業を発展させるという目的が、導き出した一つの結果だと思います。難産なM&Aではありましたが、アドバイザー冥利につきる案件でした。
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