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新元号「令和」が発表されて数日後、一万円札、五千円札、千円札の3種類の紙幣のデザインを一新するとの発表がありました。 一万円札の肖像は、福沢諭吉から渋沢栄一に…。QRコード決済や仮想通貨が今以上に流通し、キャッシュレス化が進んでいるであろう2024年。「もしかしたら、最後の高額紙幣になるかも?!」なんて噂さえあります。
ちなみに、筆者の運営しているブログのタイトルが、「ロマンとソロバン」。元々は、渋沢栄一さんの著書「論語と算盤」から、派生した言葉です。大好きな経営者が一万円札の肖像に選ばれて、一人で勝手に浮かれている筆者でございます。
「渋沢栄一が何者か?」と問われれば、様々な回答があると思いますが、一言で表現するなれば、鎖国・幕府の腐敗・強固な身分制度のせいで、欧米列強から遅れをとっていた日本を、たった半世紀で近代国家へと押し上げた人物と言えます。今まで、お札の肖像になってないのが、不思議なくらいの大人物です。
さて今回は、「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一さんについて、探っていきたいと思います。
渋沢栄一さんは、徳川家最後の将軍である徳川慶喜公のもとで、通訳として活躍していました。転機となったのが、1867年のパリ万国博覧会です。フランス滞在期間は1年半と短かったのですが、その間に西欧の進歩した文明、文化を貪欲に吸収しました。特に、「株式会社」という仕組み、「士農工商」のような身分制度が存在しないことに大きな衝撃を受けたそうです。
大隈重信さんの説得により大蔵省に入省後は、政府再建のために奔走。日本で最初の銀行である第一国立銀行(第一銀行→第一勧業銀行→みずほ銀行)など、多くの銀行を設立に関わりました。第一国立銀行は名前こそ「国立銀行」だが、中身は私立の銀行です。資本金は三百万円で、そのうち百万円を公募しました。つまり、株式組織を最初に採用した会社が、第一国立銀行です。
渋沢栄一さんは「頭取」の地位に就いたが、見方によっては”日本で最初のサラリ-マン社長”とも言えます。ちなみに、英語の「bank」から「銀行」という言葉を考え出したのも、渋沢栄一さんです。
今では当たり前の「株式会社」ですが、日本で初めて本格的に株式会社の形態で会社作りをしたのが渋沢栄一さんでした。その後、第一国立銀行を通して興した企業は、500社以上あります。その一例がこちら。
などなど…。あなたもご存知の会社ばかりではないでしょうか。銀行をはじめ、保険、鉄道、食品、宿泊業者、通信社、医療関係など企業を次々と設立。多くの株式会社の設立に関わり、私財を投じて自らも株主となり、自らもプレーヤーとして経営に携わりました。
500社以上に及ぶので、ここでは紹介しきれないほどです。もっと詳しく知りたいという方は、公益社団法人渋沢栄一記念財団のホームページをご覧くださいね。見ているだけでも楽しいですよ(๑˃̵ᴗ˂̵๑)
当時の会社といえば、財閥がコントロールする会社がほとんどでしたが、渋沢さんはあえて財閥を作ることはせず、実際の経営は信頼できる人に任せるスタイルでした。”競争”よりも”共創”ですね。発起人や資金集めの部分で尽力し、次々と時代に合わせたサービスを提供していったのです。ある意味、シリアル・アントレプレナー(連続起業家)の走りと言えますよね。「財閥のように自身が牛耳るのではなく、任せられる人に委ねる」というスタンスだったからこそ、たくさんの組織を設立することができたのです。
しかも、これらの会社自体を取引する東京証券取引所も作っています。渋沢栄一さんは、今日の社会の仕組みのベースを作ったといっても過言ではありません。「日本資本主義の父」と呼ばれるだけあって、スケールが半端ないです =͟͟͞͞(꒪ᗜ꒪ ‧̣̥̇) スゴスギ!!
実業家として有名な人はたくさんいますが、渋沢栄一さんが偉大なところは、利益を追求するだけではなく、それを奉仕活動を通して社会に還元したところです。恵まれない子供たち、社会から疎外された人々、身寄りのない人達の救済のために、様々な福祉施設を次々に作って、生涯で600以上の社会施設の設立にも関わっています。
この他にも、多くの公的事業にかかわっています。例えば、国際交流や民間外交を推進したり、また、女性教育の振興や私立大学への寄付を行ったりするなど、幅広い形で日本の振興を支援していたのです。渋沢栄一さんは、ただの起業家・経済人としてだけでなく、近代日本に多大なる貢献をした一人であると言えます。
そんな渋沢栄一さんが書いた著書が、「論語と算盤」です。「論語と算盤」は、とても読みやすい本です。誤解を恐れずに言うと、当たり前のことしか書いてありません。ただ、この当たり前のことを実践するのは、至難の業です。読めば読むほど味が出てくるスルメのような本とも言えます。
もともと資本主義とは、「金持ちになりたい!」とか「利益を増やしたい!」という欲望をエンジンとしている側面があります。しかし、儲かれば何でも良いというわけではありません。他人を犠牲にしてお金持ちになったとしても、そこに喜びも価値もないと思います。
渋沢栄一さんは、著書の中でこのように言っています。
「どんな手段を使っても豊かになって地位を得られれば、それが成功だと信じている者すらいるが、わたしはこのような考え方を決して認めることができない。素晴らしい人格をもとに正義を行い、正しい人生の道を歩み、その結果手にした地位でなければ、完全な成功とは言えないのだ。」
渋沢栄一さんは、不誠実な振る舞いや自己の利益だけを追い求める行為を完全に否定し、正しい行動から得た成功でなければ成功とはいえないと言いきっています。そして、「そもそも、不誠実な行為から得た利益は、決して永続するものではない」と警告しています。
根底にある考え方は、道徳経済合一説です。利益を独占するのではなく、経済を発展させ、国全体が豊かになるために、富を社会に還元していくことこそが重要だという考え方です。この「道徳と経済を調和させる」という考え方こそ、渋沢栄一さんが生涯を通じて貫いた経営哲学です。
ちなみに、「論語」とは2500年前の中国の思想家孔子と弟子たちの問答をまとめた古典です。現在の日本でも、道徳教育の一環として論語を使われています。渋沢栄一さんは、社会で生きていくための判断基準として、常に自分の傍に「論語」を置いていたといいます。
幕末期は、「武士は食わねど高楊枝」という言葉に代表されるとおり、いくら人格を磨いても、経済がまったく回っていない時代でした。バランスで言うと、「論語100の算盤0」という状態です。
明治維新後は、志の高い幕末の志士が西洋の科学技術と資本主義を学び、近代日本の土台を形成します。「論語50の算盤50」のバランスです。
明治後期になると、西洋の科学技術のみを学び、お金儲けばかりを優先する人間が育成されるようになりました。「論語0の算盤100」のバランスです。
そんな状態を憂いた渋沢栄一さんは、「論語による人格形成と資本主義の利益追求のバランスを取り戻そう!」として記したのが、この「論語と算盤」なのです。
私たちは、ついつい「善か悪か?」「仕事か女か?」といった二元論で物事を考えてしまいがちです。しかし、この場合どちらに偏ってしまうのは良くないですよね。大切なのは、どちらかを選ぶのではなく、バランスよく考えることです。
筆者がこのブログのタイトルを「ロマンとソロバン」と名付けたのは、倫理観とおカネの狭間に揺れる経営者の気持ちを自分なりに探っていきたいと考えたからです。その根底にあるのは、自分自身がバランス感覚を欠いたために、しくじった過去があるからです。
企業もまったく同じです。「ロマンかソロバンか?」という議論ではありません。企業が利益だけを追求し、資本を蓄積するだけでは豊かさは永続しませんし、経営者一人がお金持ちになっても、そのために社員や社会が困るようでは、その幸福は継続されません。
かと言って、自分一人の論理を押し通して、お金儲けができないようでは話になりません。万が一、倒産ともなれば、社員の生活を奪うだけでなく、利害関係者(ステークホルダー)に多大な迷惑をかけることになります。経営者の仕事は、ロマンとソロバンの帳尻を上手に合わせて、社員、顧客、取引先、株主、社会のために、堅実に会社を運営することです。
そもそも、「儲かりそう」という理由で始めた事業は儲からないものです。なぜなら、そこにはやり続ける理由がないからです。儲かりそうな事業には「儲かりそうだからやってみる」という人間がどんどん集まってきて、しまいには儲からなくなります。儲かりそうな事業をやるのではなく、やりたい事業を儲かるまで続ける。それが正しい儲け方だと、渋沢栄一さんは言っています。
私たちの中に眠る欲望は、時に暴走してしまうものです。特に、会社を売却するときには注意が必要です。M&A時には、どうしても売却金額に目が行きがちになるからです。
決して「お金持ちになりたい」という欲望を捨てろと言っているわけではありません。ただ、経営者であれば、「会社がいくらで売れるか?」よりも大切なことがあるはずです。それは、「自社をもっと発展していってくれる後継者は誰か?」という視点です。
次から次へと会社を立ち上げ、人に任せていった渋沢栄一さんも同じようなことを言うのではないでしょうか。一時的な感情に流されて、過去の自分の経営哲学と違う判断基準(例えば、おカネだけの基準)で決断したとしたら、それは引退後永きにわたって自身を苦しませ続けることになりかねません。
「自分のためにではなく、自社のために」決断できたとしたら、全体としての幸せに繋がるはずです。それが、”勇退”と呼ばれるものです。社長が作り上げた会社に対して魅力を感じる人であれば、”結果として”、売却金額に跳ね返ってくることもあると思います。
さいごに、財政再建・農村復興などに尽力した二宮尊徳さんの言葉を紹介して、終わらせて頂きます。
「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」
なかなか強烈なお言葉ですね (;^ω^)
世界最初の株式会社と言えば、オランダ東インド会社で、設立は1602年です。
では、日本ではどうでしょうか。起源については諸説ありますが、1873年に渋沢栄一さんによって設立された、第一国立銀行(みずほ銀行)と言われています。これは、「国立銀行条例」という法的な観点に基づいています。
ちなみに、一般会社の法規である「商法」に基づいて最初に設立された株式会社は、日本郵船(1893年)で、これが実質的に最初の株式会社とも言われています。この日本郵船を設立した人物が、三菱財閥の創始者でもある岩崎弥太郎さんです。
岩崎弥太郎さんは幕末期、坂本龍馬の海援隊(前身は、日本の株式会社の起源の一つとも言われる「亀山社中」)で経理を担当していました。意外なところで幕末の英雄と関係しているのは、とても興味深いところです。岩崎弥太郎の元上司という意味では、坂本龍馬を「日本の株式会社の父」と呼んでも良いのかもしれません。
続けて、こちらのコンテンツもご覧くださいませ(๑˃̵ᴗ˂̵)و テヘペロ
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